坂を転がる果実のように

吉本坂46 を応援するブログ(藤井菜央推し)

吉本坂46劇場公演への期待と不安〜〜後編 ユニット、メリット・デメリット

(主にメリットを主張する内容である。)


さて、以前から燻り続けている不安も一点ある。

たのむから!!!!!
ユニット推しを!!!!!!!
途絶えさせないでくれ!!!!!!!!!!


吉本坂は過去に3枚のCDを発売してきたが、ここまで固定ユニット制を維持してきている。

1stでは、有名芸人を主とした「選抜」(※固有名詞ではない。表題曲に選抜されたメンバーを選抜と呼ぶ)【16名】、歌やダンスなどのパフォーマンスに長けたメンバーや実際にアイドル経験のあるメンバーを主とした「RED」【16名】、"大人の社交場"をコンセプトとしてベテランが集まった「ビター&スイート」11名、ピン芸人1人と選抜ダブルセンターの各コンビ相方2人からなる「POP MONSTER」【3名】
の4ユニットの楽曲と、加えて選抜所属メンバー1名によるソロ楽曲の全5曲が制作された。

2ndでは、ユニット対抗売り上げバトルが繰り広げられた。アイドルによくあるCDの複数形態売りを吉本坂でも行っているのだが、この2ndは各ユニット毎の形態が制作され、最も多く売り上げたユニットが3rdの表題を歌う「選抜メンバー」となることになった。このとき、人数面でハンデのある「ビター&スイート」と「POP MONSTER」は合体して「スイートMONSTER」【14名】となった。
この3ユニットが、現在まで続く固定ユニットである。1期生の(卒業生2名を除いた)44名は、これらのユニットに漏れなく・重複なく所属してユニットごとにパフォーマンスを披露している。
なお、2ndでは加えて、企画ユニット「CC5」【選抜所属者2名、RED所属者2名、スイMON所属者1名からなる5名】も結成され、全4曲が制作された。

売り上げバトルは3つの固定ユニット中圧倒的な強さで「RED」が勝利し次回の表題曲選抜となることが内定した。それに伴い旧選抜には「CIRCUS」というユニット名が与えられた。

3rdでは、固定ユニットの3曲、今回の企画ユニット「CHAO」【CIRCUS所属者3名】の1曲、全員歌唱の1曲(乃木坂における『乃木坂の詩』の位置づけ)の全5曲が制作された。


このように、ここまで発売されたCDでは固定ユニット制が敷かれてきた。プロモーションのために歌番組に出たりショッピングモールなどでミニライブを開催したりといった際にも、このユニットごとに稼働してきた。例外として、現CIRCUSは人気芸人が多くスケジュールの都合のつかない者も必然的に多くなるため、歌番組での披露にあたりアンダー(助っ人)として非選抜メンバーがポジションの穴埋めをすることもあった。(その場合、身体能力が高く振り覚えの早いREDメンバーが務めることが多かった。)しかし、助っ人は助っ人であり、ユニット横断ではない。
各ユニットごとに稼働するシステムによって、ファンは各ユニットへの愛着を持ち、推してきたように思う。

少しばかり、私の推している別のアイドルグループの話をしよう。
ラストアイドルファミリーというアイドルグループをご存じだろうか。
オーディション番組『ラストアイドル』を通して選ばれたメンバーからなる看板ユニット「ラストアイドル(現・LaLuce)」と、番組内での最終オーディションに敗れたメンバーたちからなる4つのセカンドユニット「Good Tears」「シュークリームロケッツ」「Someday Somewhere」「Love Cocchi」の5ユニットを1期生として2017年にデビューし、2018年からは同様のオーディション番組を経て勝者「ラストアイドル2期生」と惜しくも敗れた「2期生アンダー」も加わり活動しているアイドルグループである。
まあ細かい経緯はここでは省くが、結論を述べると現在はすでにユニットとしての機能がかなり弱まってしまっている。いきさつが複雑なのだがとにかくある時期以降だんだんと各ユニットの存在が薄れてゆき、今年の4月にリリースされた8thシングルでは企画ユニット曲に駆逐され、固定ユニット曲は制作されていない。(過去にもそのパターンはあった)11月に発売される9thシングルでは表題曲こそユニットとは無関係の選抜企画が進行中だが、今のところほかの新企画ユニットは発表されていないので、カップリングでユニット制が復活してくれるといいのだが。

2期生の加入と定期ライブ開催によって固定ユニットの機能が弱まっていく運びを、ラストアイドルのオタクは目にしてきた。奇しくも、ローンチ時の看板ユニットが以後のシングルで表題曲から外されたことによって新たな名前を与えられたという共通点もある。(吉本坂の場合、看板はメンバー全員の共有物であるかのような意識もメンバー内にあった。だからこそ前述した助っ人制も成立した。表題を降ろされ、CIRCUSという固有名詞を与えられてはじめて『ユニット』としての結束が強まったような面もある。しかしながらLaLuceの場合は、ただの『ラストアイドル選抜』ではなく『ラストアイドル』という固有名詞を与えられたうえでそれを剥奪されたのだから質が悪い。たとえその固有名詞がオーディション番組の看板名と同じであったとしても、だ。 )

ラストアイドルと吉本坂にはどうしても符号するものを感じてしまう。既に固定ユニットが稼働し支持を得ている中で1期生とは毛色の違う2期生が加入し、さらに定期ライブも開催されるようになった。そんなラストアイドルは、吉本坂の今後に大きな示唆を与えてくれるだろう。

(ラスアイについては省いた部分の経緯が色々と複雑なので必ずしも吉本坂にも当てはまるとは言えないところもあるが)

ラストアイドルの定期ライブでは従来のユニットにとどまらない様々な取り合わせのメンバーによるライブが開催された。これは、お楽しみとして企画されたことだけが理由ではないと推測される。各地で各々の生活を送るメンバーのスケジュールを連日押さえるためには現実問題フレキシブルなメンバー編成に頼らざるを得なかったこと、また従来の固定ユニットでの公演を続けるだけでは(特に人気メンバーの少ないユニットで)集客面の不安があり、目先を変えたい意図があったこと、といった事情もあっただろう。

これらは、細部は違えどおおまかには吉本坂にもあてはまる可能性がある。

ラストアイドルの場合、集客はメンバー個人に依存するところが大きい。私のような固定ユニット推しオタクは少なく数字に繋がらなかった(、と、少なくとも運営はそう判断した)ことから、固定ユニットはないがしろにされるようになった。

固定ユニット脱却路線が明確になり始めた頃、外部のフェスなどでもシャッフルユニットのステージが披露される際、「このイベントでしか観られないスペシャルな編成でお届け!」というような煽り文が付けられていたことがあった。
はあ、そうですか、specialって、いちど英和辞典を引いてきてもよろしいでしょうか。

ユニット制により固定メンバーでのパフォーマンスを続け、さらにはユニット同士で競い合うことによって、一時期のラストアイドルファミリーはスキルアップ重視の傾向が生まれていた。大人数では生歌が難しいため概して大所帯グループは口パクをするものだが、少人数の固定ユニットでは生歌を貫いていた。(これ自体は現在のランダムなメンバーによる少人数ライブでも続けられている) また、固定ユニットで練習を重ねたからこそできる息の合ったダンスパフォーマンスもあった。固定ユニットだからこその、名刺代わりとなるマスターピースも生まれた。表題曲を歌うユニットをユニット間バトルで選んでいた頃には、どのユニットも毎週見る度に驚くほど練度が上がっていた。
とはいえ、ASH出身者やエイベックス系やLDH系のグループ、あるいはK-POPアイドルなどに比肩しうるほどの練度には、(少なくともユニット制が敷かれていた短い期間だけでは)達することができなかった。スキルを磨く修練の過程を見せるスタイルこそ現在でも続けられているが、パフォーマンススキルという結果自体に重きを置くのは得策でないと判断されたらしい。歌番組等での外部へのアプローチでは、大人数選抜での口パク歌唱が基本になった。
固定ユニットと、ユニット制だからこそのパフォーマンススキルは、ラストアイドルファミリーの集客力にはならない。ユニット制の維持を捨ててでも増員し、人気メンバーを育てることが既定路線となった。今では、なんのスペシャル感もなしに「Love Cocchi」の持ち曲『Love Docchi』や「Someday Somewhere」の持ち曲『いつの日かどこかで』を様々なメンバーが歌っている。


吉本坂の運営もそう遠くないうちにユニット固定の緩和を打ち出してもおかしくないと思っている。

今までも、トーク番組やバラエティ企画、配信企画などでは固定ユニットにとらわれないメンバー編成が多かった。しかし、ステージ稼働では各ユニットが持ち曲を歌う形が基本だった。

となると目下の問題は、現時点で楽曲を持たない2期生の処遇である。
2期生は新ユニットを結成するのか、既存のユニットに配属されるのか、そのアナウンスはなされていない。
新ユニットができるにしても、持ち曲がない。吉本坂は、基本的には手売りをしたり握手券を付けたりといった接触によってCDを売っている。現在はオンラインイベントなどをこなしてはいるものの、新しいCDを制作できるかは未知数だ。配信限定リリースなどがあるのかもまだわからない。
2期生の中には、既存ユニットへの加入を志望している者もいる。
しかし、2期生は全21名もいる。既存3ユニットでは受け皿が不足するだろう。漏れなく重複なくユニットに所属する制度を維持していくのには限界があるかもしれない。

そうなった時に運営が取りうる手段の一つが、ユニット脱却、フレキシブル編成への移行だ。

ラストアイドルファミリーにおいては、1期生22名5ユニットに対して2期生12名と2期生アンダー18名の計30名が加入した。2期生達は、活動開始直後は少人数ずつ1期生固定ユニットのライブに部分的に参加して混成で1期生の曲を披露する形を取っていた。あくまで私見であり穿ち過ぎかもしれないが、これはユニット脱却への大きな足がかりとなっていたのかもしれない。(※2期生加入に関しては、かなり早い段階でオーディションの辞退者から『2期生は1期生のような少人数ユニット制にはしないと運営が言っていた』とのリークがあり、ファンは1期と2期は別路線を歩むものかとも思っていたのだが)
現在は「2期生」「2期生アンダー」には2曲ずつの持ち曲があるが、ユニットとして稼働した経験は1期生に比べると少ない。

吉本坂2期生も、当面は正式な配属先の発表を待たずに1期生と混成でステージに立つ可能性があるのかもしれない。さらに、そのまま固定ユニット制を撤廃していく方向に進む可能性もあるのかもしれない。

正直なところ、吉本坂にどの程度ユニット推しのファンが存在するのか私には読めていない。
それでも、私はグループ内ユニット制には多くの魅力があると思っている。

アイドルグループは時に切磋琢磨し時に団結することでストーリーが生まれる。グループ内の個人間で争うときであってもユニットというホームがあることで安心感が生まれるし、ユニット同士がライバルとなることもできる。そんなユニット同士で団結することもある。固定ユニットはいわば一つの仮想人格であり、アイドルのストーリーを拡張する舞台設定なのだ。
加入と卒業のスパンが短いことの多い既存アイドルでは、人間関係のストーリーも儚いものが多い。対して活動を長く続けやすい吉本坂では、濃密な人間関係を築くことが可能だ。そのストーリーを描くうえで、固定ユニット制は大きな支えとなるのではないだろうか。

また、大人数のグループでステージの練度を高めていくのはプロのパフォーマーでもない限り限界がある。持ち味の異なるユニットに分かれて固定することで、それぞれの魅せ方に特化して経験を積むことができる。

『全記録』内のトークで、シャッフルユニットでの楽曲披露にも前向きな姿勢が見せられていた。去年のアニバーサリーライブで、出演の叶わなかったメンバーによるソロ曲を特別編成のメンバー4名で歌唱して大いに盛り上がったことに自信を得たらしい。

シャッフルユニット自体は悪いものではない。しかし、それで盛り上がるのはホームとなる固定ユニットがあってこそだ。それが無いようなら「特別シャッフルユニット」は「毎度のランダム寄せ集め」になってしまう。なり下がってしまう。それだけはどうか忘れてほしくない。
ステージの回数が増えても小手先の入れ替えで目新しくすることに逃げず、着実に質を高めることでいつ見ても飽きないロングランを目指してほしい。


アイドルは、お遊戯会と揶揄されることもある。歌も踊りもプロではないメンバーが集まってステージの上で歌って踊る様は見るに堪えないというのだ。

吉本坂には、既存のアイドルグループの中で一番ダンスの苦手な部類のメンバーよりもさらに踊れない、あるいは踊る気のないメンバーたちも在籍しているように見えるかもしれない。あるいは膝や腰を庇いながらでなければ動けないメンバーもいるだろう。
それでも私は、そんな彼らが"アイドル"を極めていくストーリーを見たい。
言いたい方々には言わせておけば良いだろう。芸の道に生きてきたメンバーの、本気の「お遊戯」を見せつければ良い。それはきっと、ただのお遊戯ではない。